じゅんさい

sakuraniikari2006-08-14


 「じゅんさい」實に懐かしいものを見た。秋田県の田で人工栽培しているじゅんさいである。もともとこのじゅんさいは、限られた湖沼などに自生していた。食べるとぷりぷりと歯ごたえがあり、またぬるぬるとした感触である。
 月月火水木金金の猛訓練で、初めての全員外出となつた。一種軍装に身を固め、帝国海軍飛行予科練習生としての、身だしなみ等の検査受け、勇んで隊門を出た。出るのは出たが初めてなので、どこで、羽をのばすかわからない。ぞろぞろと後について行った所が、早朝訓練で走る見慣れた動植物園であった。ひとまず園内を見物、そろそろ腹に納めるものが欲しくなる。予め連絡していたのか肉親と再会団欒の練習生もいる。池の畔にレストランがあった。食堂ではない。中に入ると、すでに多数の練習生で埋まっていた。見ると殆どお椀に汁のようなものを食べている。戦時下紗婆にはもう食べるものはないのだ。初めて金を払い初めて食べる、すする。ぬるぬるとした感触しか覚えていないが、およそくい盛りの練習生の腹を、満たすものではなかった。