狂った人生

 60年前日本はベビーブームで毎日たくさんの赤ちゃんが産まれていました。問題の東京のこの産院でも午後から2人の赤ちゃんが産まれました。時間差約40分くらいだったようで産院では相次いだ出産で忙しく、沐浴などで取り違えないように嬰児の足の裏に印を付けて間違わないようにしたようです。ところがここからこれからの人生に明暗が分かれました。

 問題のAさんは3人兄弟の弟として生活したらしく、父亡きあとは4畳半一間のアパートで生活し、兄たちと同じく中学卒業をすると工場で働き家計を助けました。

 Aさんの本当の家は富裕層で、弟たちは私立高校で学び大学を出て上場企業に勤めている恵まれた生活をしていました。Aさんの替わりのBさんは顔も似ておらず父が病気で倒れてからも手助けもなかったようで、不審に思った弟たち3人はDNA検査をしたところ99,9パーセント異なることが判明しました。

 Aさんの60年は元には戻りません。現在は車のドライバーとして生活しています。その兄に弟たちは温かく「まだ20年ある」仲良く生きていこうと励ましたようです。私は新聞の記事を読んで涙が止まりませんでした。今もこの文のキイーを打ちながら涙が止まりません。失われた60年の兄弟愛を、残り少ない人生で補おうという弟たちの優しい心が私の心を打ちます。