さらば中国

 ピットを出た飛行機は定時に出発点より、エンジンの回転を上げいよいよ離陸の為走り出した。順次回転は上がり猛烈なスピードなのが分かる。滑走路で擦れるタイヤの音がしなくなったと思ったら、もう機体は空中に浮き、曇り空に突き進んでいく。中国とお別れだ。街も畑も工場も車もどんどん小さくなる。

 やがてそれも雲の下に、飛行機は視界ゼロの雲の中へ。機内も暗くなる。なんだか不安がよぎるが、機内が明るくなるにつれ、やがて雲の上に出た。ぽっかり浮かんだ白い雲がきれいだ。

 機体は殆ど雲の上、水平飛行になるとまもなく機内食のサービスのアナウンスがあった。うなぎととりのどちらか一つ。ためらわずうなぎにする。

 これが実に美味かった。上海でもろくな日本食しか食べられなかったせいか、うな丼に野菜サラダ、サザエのわさび和えに小魚の佃煮、、フルーツトマトにスイカ。食後のコーヒーとくれば文句ない。

 福岡は曇りで気温28度という。割と涼しいなぁと思っていると機体は雲の中に視界はゼロ。大きく機体は揺れエヤーポケットに落ちる。客室乗務員も手すりを掴まえて注意をうながす。隣の中国娘は椅子の肘掛を掴みかがみこんでいる。気持ちが悪いらしい。美味かった日本食が食い納めにならなければいいがと恐れているうち、正常飛行になった。やれやれである。

 やがて青い海が見え、美しい九州の青い山が見えてくると、福岡だ。福岡は雨だった。だんだん高度を下げ着陸態勢になる。いつ搭乗してもこの時が一番こわい。やがてタッチ。タイヤの擦れる音が聞こえるともう安心だ。日本に着いた。また日本での生活に戻る。
 
  上海浦東空港の国際線ターミナル全長1kmはある。
 
  目の下に浮かぶ綿を散りばめたような白い雲がきれいだ。

 
  *明日から続いて旅行記を掲載したいと思っている。