検査

 「お願いがあります。わたしの論文の文法や語彙などの修正をしていただけませんか」と突然の依頼、どうしたものかと思案したあげく「私に出来ることでしょうか」と探りを入れた。「あなたなら出来ますよ」とのことで引き受けることになった。

 これは、中国山東省の青島大学日本語学科大学院生で、現在北京の日本企業に勤めているKさんからだった。大学に残り、研究を続けるつもりでいたが、結婚を早くしなさいと親から言われるので、とりあえず就職をした。今夏の期末には論文を提出しなければならないので、学校に戻り論文作成にてんてこ舞いをしているようだ。

 送ってきた文書をみると、論文が堅苦しく記されているので、修正点を探すのが難しい。わざと言い回しを難しくしているのか、2ページしかない第一文を検査するのに30分も掛かった。修正が四箇所あったが、「あとは自分で何度も読んで直してください」と投げ出した。こんな大事なことは引き受けないほうが間違いないと感じた。